難関大突破に必要な学力を試す化学の問題やその解答・解説などを配信していきます。
研伸館で理科を担当している森上総です。ご縁があり『入試問題で味わう 東大化学』(オーム社)の共著者として執筆に携わりました。
ときどき生徒から「東京大学志望なのですが 先生の本は読んでおいた方がいいですか?」と聞かれます。
拙著は 東大の化学の問題を通して化学史や環境問題、最新の技術などに関心をもってもらうための読み物です。そのため高1・高2生には「少し難しいところもあるけどぜひ読んでみて」と勧めています。
一方で高3生には「合格してから読んでも面白いよ」と答えることが多いですね。
残念ですが高3生は問題集や過去問での練習を優先してください。
今年の春、弊社のブログの担当職員に「森さん、書籍出版後も東大の化学で『これは解説したいな』と思うような出題はありましたか」と、おもむろに聞かれました。
東大の問題はもちろん知識や思考力を測るために作られていますが深く読み解くとその背後にある科学史や社会とのつながりが見えてきます。
「いくらでもあります」という趣旨のことを答えたところ、間髪を入れずに「では、その問題を『強者の戦略』の記事として書いてください。
よろしくお願いします」と退路を断たれてしまい、この記事を執筆するに至りました。
さて、東大の化学ですが、2025年度入試では出題形式が大きく変わりました。
2024年までは大問3問構成で、各大問がⅠとⅡの中問に分かれ、それぞれに小問が5題前後ありました。
中問ごとに内容がまったく異なっており、つまり、1年に6つのテーマが、
出題されていたことになります。
2025年は大問3問構成という点は同じでしたが 中問の区分がなくなり、大問1問あたりの小問数は10題ほどに増えました。
解答する小問数は大きく変わらないものの、導出過程を書かせる問題や論述形式の問題が増え、解答に時間を要する傾向が見られました。
また、出題テーマが3つに絞られたため、苦手分野を後回しにするような戦略も取りにくくなっています。
来年度も同様の形式になるかは分かりませんが どのような出題でも対応できる力を養っておくことが重要でしょう。
今年も例年どおり「面白い問題揃い」の東大化学でした。
ただ、出題形式の変更により1テーマあたりの情報量も設問数も増えています。
全問を詳しく解説すると 読み物としてはかなり重くなってしまいます。
そこで今回は 問題の解法解説そのものは過去問題集などに譲り、特に興味を惹かれた部分とそれに関連する設問に絞って取り上げたいと思います。 テーマは 2025年第3問「固相ペプチド合成法」です。

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