小論文を指導していて時折投げかけられる問いかけは「作文と小論文の違いは何ですか?」というものです。一般的によく言われているのは、以下の2点です。
①自由度の違い
作文 :出来事に対する感想や感動を豊かな表現で自由に述べる
小論文:与えられたテーマや条件に即して表記上のルールを守りつつ論理的に述べる
②評価の違い
作文 :語彙力や表現力、また新鮮な発想や感性が高く評価される
小論文:表記上のルールを厳守している点や確かな根拠を元にした論理的構成力が高く評価される
(国語・小論文担当 木村彰宏講師)
医学部で課される小論文とは?
医学部で課される小論文は大きく分けて次の3種類です。
①課題文読解型
②テーマ提示型
③特殊型
「課題文読解型」と「テーマ提示型」がオーソドックスなパターンであり、医学部小論文といえば8割方このどちらかになります。
③の「特殊型」は非常に特色のあるもので、たとえばシチュエーションを設定された上で誰かに「手紙を書かせる」(愛知医科大学)という体のものや、写真や絵を提示して「感じるところを述べよ」(順天堂大学)というような「ムチャ振り」とも言える難題を投げかけてくる大学もあります。これらは恐らく受験生の「発想の豊かさ」や「とっさの状況対応力」を試したいのだと考えられます。初見では戸惑ってなかなか頭が追いつかないことになってしまいますので、自分が受験しようと考えている大学の出題傾向は予め確認しておくことが必要となります。
さて話は戻って、「課題文読解型」と「テーマ提示型」にも2種類あって、ストレートに「医療における問題点」や社会の現状を踏まえた上での「理想的な医療のあり方」に関わる課題文やテーマを掲げて問うてくる場合と、医療・医学とは無関係と思える課題文やテーマを出してくる場合です。同じ大学であってもどちらかに統一されているということはありません。ただしやはり医学部の入試問題ですので比較的医療・医学に関わる課題文やテーマが選ばれることは多いと言えます。
医学部小論文特有の評価基準は?
先述した、表記上のルールが守られているかや根拠のある論理的構成力に加えて、医学部小論文ならではの評価基準は以下のことが考えられます。
①「医療における問題点」や「理想的な医療のあり方」が課題文やテーマとして出された場合は、医師を目指す者としてそれらに関心を寄せ、さらに自分なりの展望や解決策の方向性を示せているかどうか
②医療・医学とは無関係な課題文やテーマが出された場合は、論点を絞った上で常識的かつポジティヴな主張を掲げて、人間として成熟した文章を展開しているかどうか
ここで問題となるのは特に①の場合で、その医療的な問題点やそれにまつわる社会的な現状についての知識や理解がないと到底評価されるべき文章は書けないということ。また、自分なりの展望や解決策の方向性も「この問題にはコレ」という、いわゆる「自分なりのネタ」や「引き出し」を持っていないとなかなか書けるものではないということです。日頃担当しているMedi-UPでの小論文講座ではできうる限り「日本社会における医療の現状や問題点と解決策」について講義解説のみならず生徒も含めて考えさせるというスタンスで進めています。
小論文の評価を高めるコツは?
医療・医学の問題点などが取り上げられている場合、評価をさらに上げるためには、「社会全体として~の意識を高めることが必要である」や、あるいは「今後の医療では~することが有効だと考える」というように「社会全体」や「医療のあるべき姿」としてあなたなりの意見や提案がなされているかが鍵となります。社会全体に影響を持たせるものとして考えられることは「法律や制度」「教育」が挙げられます。そこで「~についての法律(制度)の設定が望ましい」や「教育の中で~を広く啓蒙していくべきである」という書き方によって社会全体に広める方向性を示すことができます。たとえば、「僻地における医師不足」という問題点の解決策ならば、「一定の期間僻地医療に従事してくれた医師に対して社会貢献医という資格を与え、再就職や報酬が有利になるような制度を設ける」ことや「僻地医療での医師としての働きがいを広く子供たちに知ってもらうための講演会を開くような試みを教育の中に取り入れる」などです。
いずれにしても医学部小論文というものは「社会や日本の現状」あるいは「医療の問題点」や「最新の医療技術や今後の展望」についての関心と物事を論理的に考えて、しかも他者にそれが伝わるように文章化するという日頃からの精進がものを言います。他の教科に汲汲としている受験生にはさらに高いハードルを課すわけであり、そういう意味でも医学部受験合格は茨の道だと言えるでしょう。
Medi-UP 小論文担当
木村 彰宏
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