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私立医大入試化学の正誤問題が難しい理由

私立医大入試の化学では正誤問題がよく出題されます。受験生に過去問を解かせてみると、正誤問題の正答率がとても悪いことがわかります。試しに一つ解いてみましょう。金沢医大2022年です。

【問】次の①~⑥から正しいものをすべて選べ。
①中和反応は水溶液中でのみ起きる。
②水溶液にしたときに酸性を示す塩を酸性塩という。
③同じモル濃度では、1価の酸より2価の酸のほうが強い酸である。
④pHが1大きくなると、その水溶液中の水素イオン濃度は10倍となる。
⑤水素イオンと水酸化物イオンで起こる中和反応は常に発熱反応である。
⑥水に溶かしたときに酸と反応して塩をつくるような酸化物を塩基性酸化物という。

「すべて選べ」ですから消去法は使えませんね。金沢医大、厳しい。

正解は「⑤⑥」です。
①反例:HCl(気)とNH3(気)の中和。これは教科書で「水溶液中以外でも中和反応は起きる」ことの例として挙げられている。
②酸性塩は、元の酸に由来するHが残っている塩のこと(NaHCO3など)で、水に溶かしたときの液性とは無関係。これも教科書に注意がある。
③反例:HCl(強酸)とH2CO3(弱酸)など。
④10倍ではなく1/10倍。
⑤中和熱のこと。必ず発熱。
塩基性酸化物の定義そのもの。

一つ一つの選択肢は難しいことは聞いていないのですが、すべての正誤を正しく判断するのは簡単ではないと思います。
なぜ正誤問題は難しいのか?以下のような理由が考えられます。


1. 正誤問題という性質上、いわゆる「典型問題」があまりなく、「今まで問われたこと・考えたことがない」という文章がほとんどである。

2. 先生に教えられたことや問題集の解説に書かれていることを、あまり深く考えずに受け入れてきたため、「誤った文章」(=「嘘」)を見抜くことに慣れていない。

3. 一つの問題で分野横断的に幅広く知識が問われることがあり、苦手分野があると失点しやすい。

4. 一般的な文章から具体例を引き出すことに慣れていない。上の金沢医大で言えば、「酸性塩」や「2価の酸」と言われてNaHCO3やH2CO3がぱっと出ない。

5. 受験生の心理として「自分があまりよく知らないこと」=「誤りの文章」と判断してしまいがち。しかし、受験生があまり知らないような知識が誤りの選択肢になることはまれで、誤りの選択肢はごく基本的なものであることが多い。

ざっと思いつく要因を挙げてみましたが、1〜5で挙げた要因は結局のところ「教科書に基づく体系的な知識が身についていない」ということに尽きます。問題集ばかり解いて、教科書を読むことを怠っていませんか。知識の根拠をしっかりと教科書の記述に求めてきたか?「これは教科書のあの章のあのあたりに書いてあったな」と思い出せる状態になっているか?ということです。

したがって正誤問題の対策としては(「対策」というほどのものでもないのですが)、「一つ一つの選択肢の文章を、知識の体系に紐付けていく」というものになります。正答したかどうかではなく、すべての選択肢に対して「正しい(なぜなら教科書によると…)」or「誤り(なぜなら教科書によると…)」と迷いなく判断できる状態なのか?をチェックすることです。これをやらずにマルバツだけで終わっている受験生が非常に多い。これでは正答率は上がりません。正攻法で勉強していきましょう。

Medi-UP化学講師
織田 拓也

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